宮城県蔵王町のお客様からご依頼をいただき、七島藺を使った琉球畳を製作・納品しました。
お客様は自然素材への関心がとても高く、特に七島藺に強い拘りをお持ちでした。
大手ハウスメーカーで新築中、畳だけ当店に分離発注されたのですが、それまで宮城県内の複数の畳店にも問い合わせをされていたそうです。
その中には七島藺の琉球畳を施工した経験のある畳店が少なく、畳床(芯材)についても稲藁ではなく、木質繊維などを化学的に成形した建材床を前提とした提案が多かったとのこと。
インターネットで時間をかけて探された末に、素材や製法に対する当店の考えに共感してくださり、遠く離れた兵庫県の当店にご相談頂きました。
メールでのやり取りの中、お客様は他店から提案された「い草のヘリ無し畳」についても、実際のところどのような物なのか、仕上がりや耐久性に問題はないのかと、慎重に検討されていました。
そこで、遠方のお客様にも実物をじっくり比較していただけるよう、手のひらほどの小さな畳を4種類製作して郵送しました。
七島藺 × 稲藁床
七島藺 × 建材床
い草 × 稲藁床
い草 × 建材床
素材の違いだけでなく、畳床の違い、そしてヘリ無し加工した際の角の状態まで、実際に手に取って比べて頂くためです。
七島藺を使った本物の琉球畳は、決して安価な買い物ではありません。
だからこそ、こちらから「これが本物です」と勧めるだけではなく、お客様自身に実物を見て、触れて、納得した上で選んで頂きたいと考えました。
サンプルをご覧になったお客様からは「とても参考になりました」と喜んでいただき、最終的には、他店から提案されていた「い草 × 建材床」ではなく、当初からお客様自身がこだわっていた「七島藺 × 稲藁床」で正式にご注文頂くことになりました。

い草(左上)と七島藺(左下)植物が異なり、性質も然り。

稲藁の優しさや角の技術力も見て頂く為のサンプルです
宮城県産の稲藁を使って
今回の畳床には、宮城県産の稲藁を使用しました。
当店は正規国産畳専門店、畳表はもちろん畳の芯材も中国産の稲藁や古畳の再利用藁は一切使いません。
宮城県蔵王までお届けする畳だからこそ、その土地で育った稲の藁を使うことにも意味があるように感じています。
そして無事納品し終えた帰りには、普段から当店が稲藁床を作って頂いている宮城県の藁床屋さんにも立ち寄り、工場を見学させてもらいました。
畳を納めるだけではなく、そこで使われる稲藁がどの様な場所で、どのように畳床になっていくのかを自分の目で見ることができ、また製造所の拘りを聞けたのも、今回の旅で得られた大切な経験でした。

稲藁を編んだ裏菰(うらごも)に次の藁が層をなして重ねられていきます

裏菰に対し向きを変えて次の藁が配置されます

当店が扱うのは全て純国産の稲藁のみ使用した藁床です

踏んだ瞬間に伝わる身体への優しさと心の落ち着き。
距離よりも、拘りが「繋がる」こと
納品当日は、蔵王町まで約14時間半の道のりを車で走りました。
出発前は、遠方に限らず作品を届けるという緊張感と、お客様に喜んで頂けるかどうかの不安はいつもあります。
それでも、今回これまで打ち合わせを重ねてきたお客様の拘りを思うと、楽しみな気持ちの方が強く、長い道のりもそれほど苦には感じませんでした。
納品中は、お客様が終始作業を見守ってくださいました。
そして最後の一枚まで敷き終え、すべての畳がきれいに納まったとき。
とても満足された様子のお客様を見て、私自身も大きな安堵と達成感を感じました。
長い距離を走ってでも、この畳を届けに来て良かったと思える瞬間でした。
遠方への納品は、決して効率の良い仕事ではありません。
それでも今回のように、素材を大切にするお客様と、素材を大切にして畳をつくる私の思いが結びつくのであれば、蔵王までの距離も大きな問題ではないなと感じました。
「本物の畳を選びたい」
そう思ってくださる方に、きちんと応えられる畳店でありたい。
また応援して下さる方に、きちんと応えられる人間でありたい。
今回のご縁は、これからも自分が信じる畳づくりを続けていく上で、大きな自信と励みになりました。
七島藺を守り育ててくれる農家さん
日本の稲藁で畳の芯材を作ってくれる数少ない床屋さん
日本製の畳に拘ってくれるお客様
有難う御座います
おかげさまで、当店の役割が繋がっていきます



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