日本人は稲の上で暮らしてきました
日本人の暮らしは、昔から稲とともにありました。
お米は主食であり、田んぼは暮らしの中心。
稲はただの作物ではなく、人の命を支える大切な存在として大事にされてきました。
秋になると黄金色に実る稲穂の風景は、日本の原風景とも言えます。
そしてその風景は、静かに人の手仕事によって支えられています。
実際に私も、種蒔きの作業を体験させていただいたことがあります。
米は収穫のイメージが強く、
種から育てるという感覚は、それまであまり実感がありませんでした。
一粒万倍という言葉があるように
一粒の種から、たくさんの実りへとつながっていくこと。
その過程に触れたとき、
頭で理解していた以上に、自然と感謝の気持ちが込み上げてきました。
そんな稲ですが、実は私たちの暮らしの中で、もう一つ身近な形で使われてきました。
それが「畳」です。
畳の表面は「い草」でできていますが、昔から畳の芯に使われてきたのは「稲藁(いなわら)」です。
稲を収穫した後に残る藁を何層にも重ね、しっかりと圧縮して畳の土台を作ります。
つまり日本人は長い間、稲から生まれた素材の上で生活してきたということになります。
畳の上で座る。
家族で寛ぐ。
寝転んで、休む。
その日常は、稲の恵みの上で営まれてきた暮らしでもありました。
ところが現代では、畳の中身は大きく変わっています。
見た目は畳でも、稲藁を使わない畳が多くなりました。
もちろん、それには時代の流れや理由があります。
しかし本来の畳が持っていた自然素材としての魅力や、日本の暮らしとの深い関係は、あまり知られなくなってきているように感じます。
当店は今でも、日本の稲藁を使った畳を作り続けています。
実際に畳の上で寝転んでもらう体験をしていただくと、多くの方が同じような感想を口にされます。
「落ち着く」
「気持ちいい」
「なんだか懐かしい」
畳の経験が少ない若い方でも、同じように感じることがあります。
人の身体は、自然素材の心地よさをどこかで覚えているのかもしれません。
畳は、ただの床材ではなく、日本の自然と暮らしの中から生まれてきた文化のひとつです。
次回は、あまり知られていない「畳の中身」について、もう少し詳しくお話してみたいと思います。
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